推理小説はその特性上、最終章に最大の盛り上がりがあり、
その道中が退屈な場合が結構あります。
そして肝心の種明かし部分がモッサリしていると、すごく残念な気持ちになります。
そんな中で手にしたこの一冊、果たしてどうだったか?感想をレビューしていきます。
舞台と背景
舞台は山村で起きたカルト宗教団体の集団自殺で一人だけ生き残った少女。
少女はおぼろげな記憶をもとに、その村で起こった『奇跡』の全容を探偵に依頼するといった内容です。
依頼された探偵も特徴的な出で立ちと、その他登場人物も中国系や老人紳士、小学生や枢機卿まで。
バラエティに飛んでいます。
中国の拷問や戯曲の引用が多いため、ちょっと知識が無いと置いてけぼり感が強いです。
また、登場人物も中国名が飛び交うため、「読み方がわからん」となることもしばしば。
このあたりは難しく感じ、読むのを挫折しそうになります。
ですが、ここから先は登場人物による《多重解決》が繰り広げられ一気に読むスピードが上がります。
多重解決
5人による推理合戦は、ストーリーをあらゆる角度から考察していく『多重推理』合戦ですが、
探偵の上笠(うえおろ)がひとつずつ反証(反対の証明)していきます。
読み手側は、なるほどと思いつつまだ残りページもありるので、そんな感じの解決では落ち着かないでしょ。
と思いつつ、これどうやって反証する?を論破していく様は高揚感があります。
そこでキメの一言
「その可能性は、すでに考えた」
真相
あらゆる可能性を排除してたどり着いた真相は、切なさと優しさと開放感にあふれます。
とってつけたような「ピンチ」は少し余談かなと思いますが、
エンターテインメント性を持たせるには、まあいいかなと。
まとめ
ミステリー初心者には、難解な部分もあり、少しハードルが高い一冊だと感じました。
推理小説の魅力は、「探偵の魅力」「トリックの鮮やかさ」「動機の納得感」
これに尽きると思います。ルールから外れても面白い小説も数ほどありますが、
ひと味違った一冊を求めている方にはおすすめです。