「オリオン座の配置は、なぜこうも人をひきつけるのか?」
おそらく空を見上げたオリオン座から着想して、一気に書き上げた感じがします。
空気が澄む冬の空に輝くオリオン座、星に詳しくな人も形の分かりやすさからオリオン座といえばアレねと、想像がつくでしょう。
ベルト部分の3つの星、3つ星を囲うように配置された4つの星、単純に線で結べば砂時計のような形が現れます。
ギリシャ神話では、コレを人の形に見立て、オリオン座と名付けてます。
右肩部にあたる星「ペテルギウス」は既に爆発してる可能性もあり、600光年離れたその星は今どんな形になっているか?
それはいずれわかるかも知れない宇宙のお話、遠いかも先かも知れないし、明日かも知れない。
もういいですか、星のはなし。
作中も随所にオリオン座になぞらえて話が進みます。トリックの鍵だったり、伏線の回収だったり。
伊坂作品を多く読んでいる方であればお馴染みのキャラがコレまた活躍します。今回は物語のほぼ中心です。
空き巣泥棒の「黒澤」、私のイメージでは、「大泉洋」や「堺雅人」を連想します。
知的でクレバーなのだがユーモアも忘れない、そんなイメージ像ですね。
物語の軸は立てこもり事件「白兎事件」を中心に進んでいきます。
が、
ところどこにはさまる作者の視点で、物語が巻き戻ったり、場面転換だったり事件を解説していきます。
コレが読者からすると映画を巻き戻して見るような、副音声でみているような感じで最後までいきます。
伊坂作品の中でも珍しいパターンではないでしょうか?
そして、徐々にトリックが明かされていく過程はさすがで、気づいた頃にはすっかり作品の深みにハマっています。
ところどころ、よく理解しながら読まないと錯綜する場面もありますが、全体としては全然問題ありません。
伊坂作品の好きなポイント
- ユーモアのあるセリフまわし
- ケイパーもの(ミッションインポッシブルのような)
- 軽妙で愛着のわく登場人物
- トリック
今回もこの要素はふんだんに詰め込まれてます。映画にするにもちょうど良い長さですね。
ただし、長年伊坂作品に触れている方であれば、安心して読める内容ですが、鮮烈な新鮮さはあまりありません。
敵役はもっと非道というか、もう少し凶悪に書いて欲しかった。逆転劇がもっと感動的なラストに出来たかもですね。
ケイパー要素としての一連の流れも『陽気なギャングが地球を回す』を初めて読んだときのオモシロ!のような感動まではいきませんでした。
作中好きなポイントは
- 黒澤のいつものたたずまい
- 息子と母親の結託シーン
- 夏之目課長の決心
『ラッシュライフ』や『重力ピエロ』のような劇的な内容ではありませんが、
伊坂作品を安心して読める作品です、いかがでしょうか。
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